その死を前にしたとき
いま、あなたがたがこの20世紀の繁栄の時代にあって
あれも欲しい、これも欲しい、と思い
それを得ることによって満足できると思っていたさまざまなものが
本当は何の意味も価値もないのだということを
痛感することでしょう
……
そして、食べ物というのは
人々が何年分も貯蔵したりすることはできないものです
食べ物こそは作っては食べ
いつも流通をさせていなければならないものなのです
それは宝石やお金のように貯えることはできないものなのです
だから、その混乱のときに
自分だけは食べ物に困らないというような備え方はできないのです
そしてそこでは
人々はお金の無力さというものも痛感するでしょう
どんなに銀行の貯金口座にたくさんのお金を持っていても
今日の食べ物をどうしても得ることができず
それが三日も四日も一週間も十日も続くとすれば
やっぱり死ぬ他はないのですから
ここに至って人々は
今までお金や貴金属など貨幣価値のある物を持っていれば
楽な暮らしができるし、幸せに生きられると思ってきた
そのお金や物への信仰を捨てざるをえなくなります (P146-148)
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